2011年08月27日

[抄訳]The Economist "Economics focus: An unpalatable solution"

別の作業の副産物として、英文記事の抄訳(ほぼ全訳)ができたので、記念に掲載。


Economics focus: An unpalatable solution(受け入れ難い解決策)
http://www.economist.com/node/21526325

(抄訳)
欧州債務危機は、ユーロ圏の周縁国であるギリシャから、イタリアなどの中核国まで、驚くべきスピードで広がった。ECBは、イタリア・スペイン国債の買入れを通じて市場を安定化させたが、これは一時しのぎ(palliative)にすぎない。より抜本的な解決策として、不安定な通貨同盟を財政によって補強する、"Eurobonds(ユーロ共同債)"の発行を求める声が多い。

ユーロ共同債は、発行国のソブリン格付けと借入れコストとの連関を断ち切る手段として提唱され、"European debt agency(欧州債券機関)"を通じた債券発行により、各国(ユーロ圏17ヶ国)は資金を調達する。この共同債は全加盟国が共同で信用を保証する。

共同債構想の理論的根拠は、ユーロ圏を全体で捉えた時の財政が他の先進国と比べて、かなり良好な状態にあることにある。今年度のユーロ圏における一般政府債務残高の対GDP比は、88%となる見込みであり、これは米国(同98%)よりも低く、英国(同83%)ともそこまで変わらない。財政赤字対GDP比の見込みも4%をわずかに上回る程度で、米国(同10%)や英国(同8.5%)よりも低い。さらに、格下げのあった米国ですら、国債の信認は揺らいでいない。このことは、ユーロ圏の債務を各国が共同で負担(pooling)することで、債務危機を終結させることが可能であることを示唆している。

一連の市場の攻撃は、通貨同盟という制度に固有の脆弱性を浮き彫りにしている。すなわち、同一の通貨を使用しているがために、加盟国はそれぞれ別個の債務を負っているにも関わらず、通貨の切り下げ(国内的にはインフレ)によって危機を免れることができないという点である。投資家が、加盟国の財政の先行きに対して不安を持てば、たちまち国債利回りは維持不可能なレベルにまで上昇し、投資家の懸念は自己実現化する。ECBは国債の買入れを通じて一応は市場を沈静化することができるが、一定量以上を買い支えることとなれば、それは中央銀行としての独立性を脅かすことにもなりかねない(訳駐:買入れた国債がデフォルトすれば、中銀B/Sが毀損される)。共同債は、そういったリスクを1つにプールすることで、流動性危機への持続性のある対処策となる。

共同債を導入するもう1つの理由は、現下の危機への防衛策が、とても薄弱であることが明るみになり始めたからである。昨年、欧州周縁国の救済基金として"The European Financial Stability Facility (EFSF、欧州金融安定化ファシリティ)"が設立され、今秋には4,400億ユーロもの基金をプールすることとなっている。4,400億ユーロという額は、ギリシャ・アイルランド・ポルトガルの救済には十分なものであるが、もしスペインやイタリアに危機が飛び火することとなれば、不十分である。明快な解決策は、額を増やすことであるが、実はEFSFというシステムそのものが、固有の弱点を抱えている。加盟国が共同で保証するEurobondsとは異なり、EFSFはユーロ圏における経済規模のウェイト(GDP?)に従って、各国から資金が拠出される。それゆえ、もしフランスが最上位格付けを失うこととなれば、EFSFはAAA格を得られる救済基金の多くを失うこととなる。

現在、強固な財政基盤を持ち、ユーロ圏の意思決定を支配するドイツを始めとする国々は、共同債構想の実現を、2つの理由から恐れている。1つは、17カ国の債務をプールすることで、財政基盤の弱い加盟国の資金調達コストを引き下げる一方、最上位格付けを持つ国の利払費を上昇させることである。試算によれば、共同債の導入によって、ドイツの納税者は対GDP比1.9%もの負担増を強いられる。また、2つめは、将来のことを考えない無思慮(improvident)な政府に、財政規律を持たせる市場圧力を排除してしまうことである。

共同債の提唱者は、これらの点にうまく反論している。シンクタンクBruegelの提言によれば、共同債市場は、各国それぞれの国債市場よりも規模が大きい(流動性が高い)ため、流動性プレミアムが小さく、加えて、共同債で調達できる資金の限度額を、各国GDPの60%未満に制限することで、借入れコストを抑えることができる。GDPの60%超える調達(Bruegelは、60%未満を"blue"、それ以上を"red"と名付けている)に関しては各国がそれぞれ信用の責任を負う。すると、redにかかる調達コストは高いものとなるため、各国にとって慎重(prudent)な財政運営を行うインセンティブとなる。

しかし、このアイデアは2つの問題点を抱えている。1つは、債務を"blue"と"red"の2つのトランシェに分割することで、redにおける調達コストの急激な高まりという代償によって、blueにおける高い信用が実現されることである。これは、財政基盤の脆弱な国の立場を、より際どい(tricky)ものとする。2つめは、将来再び債務危機が起これば、60%という制限を守ることができない可能性がある点である。

Eurobondsは、信用度の高い国の犠牲によって初めて可能となる。ドイツにとっては、共同債の導入にかかるコストが、ユーロ救済のにあたって負担するに値するものなのかどうか、という点が問題となっている。一方、他の加盟国にとっての問題は、放漫財政への防波堤としてドイツが主張する、強力な財政統合(centralisation of fiscal policy)を看過できるかどうかという点にある。
posted by あうあう at 12:54| Comment(0) | 経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年08月14日

池井戸潤『下町ロケット』

下町ロケット [単行本] / 池井戸 潤 (著); 小学館 (刊)

まあ第145回直木賞受賞作品だそうな(*´ω`*)。

作者の池井戸潤氏はビジネス書をよく書かれるらしく、話の中でも、ベンチャーの資金調達の方法とか、損益計算書の読み方の解説とか、小説としては非常に興が冷めるような記述が時々織り込まれております。

ストーリーは勧善懲悪調で、変な修辞や寄り道もなく、軽快に進んでいく。
主人公は大田区にある中小企業の経営者で、構成としては、前半が法廷闘争、後半がロケットに搭載するバルブシステムの三菱重工(作中:帝国重工)への売り込み。
知財戦略が一応ベースになっており、大企業が中小企業をdisりつつ嫌がらせをしてくる中、持ち前の技術を武器に、大企業をやっつけて(あるいは認めさせて)いくストーリー。

基本的には、「大企業=悪、それに立ち向かう中小企業=善」という分かりやすい構造。
作中に出てくる大企業の社員というのが、鼻持ちならないぐらいに中小企業をdisってきて、
「おめーらロクな技術持ってねーだろww」
みたいなことを平然と言ってくるわけです。こんなやつおらへんだろというぐらい、ひたすら上から目線。
そんなDQNたちが、実際の部品をテストするやいなや、
「ははー!参りました!」
という水戸黄門的な展開がなされます。

まあ勧善懲悪ものは痛快なので、コンビニエンスな感動も呼び起こせるとは思いますが、
果たして本当に大企業ってこんなにクソなの!?という疑問。
(また、ハードボイルド小説かと思うぐらい、主人公が他社の人間に対して敬語を使わないのもどうかと思いましたがw)


結論から言えば、中小企業の技術力をdisってる大企業製造業なんて、まず現実にいないでしょう。
あんだけテレビ・マスコミ・中小企業庁等が散々技術をPRしてるのに、何でまたこんな現実離れした架空の大企業が出てくるのかは不思議でなりません。
http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/sapoin/monozukuri300sha/3kantou/13tokyo_22.html

例えばコマツは下請け企業を、自社と対等な「協力企業」と称し、競争力を高めるための積極的な支援(海外展開支援も含む)を惜しみなく行っておりますし、
http://www.komatsu.co.jp/CompanyInfo/csr/2011/pdf/25.pdf
イラ菅様におかれましても、パフォーマンスとして、昨夏に大田区の町工場を視察した際に緊急円高対策を打ち出す等、中小企業の技術力というものは人口に膾炙しております(大田区の町工場って概して国際競争力が高くて、自力で海外に行けたりもするんで、「円高で可哀想だから緊急に予算組むよ!」と言う場所として適当なのかどうかはまた別の話題w)

そんなわけで、現実はどうあれ、ある意味で時代風景を反映した受賞なのかなとも思います。民主党の基本理念も「大企業に厳しく、中小企業に優しく」が根幹にあるきらいがありますし。
とはいえ、disり合ってた登場人物たちも、最終的にはお互いを認め合って、大団円で締めくくるというディズニー映画的なアレなので、読後の消化不良感はそんなにありません。ぜひ書店でお手に取りってみてください。
僕がamazonで☆をつけるとしたら、2/5ぐらいですヾ(*´∀`*)ノ

おまけ
経済小説には最近2パターンあるのかなと思っていて、

本流:山崎豊子、城山三郎等
ニューカマー:堀江貴文、池井戸潤等

という感じなのかなと思います。本作品の展開の軽快さ(悪く言えば軽薄さ)は、ホリエモンの「拝金」に通じるものがありますね。文章の味わい云々より、テーマが面白くて、知りたいことがすぐに知れれば、表現技法なんてどうでも良いじゃん?的な。
やはり最近の若い人には、ニューカマーな経済小説の方が受けるのかなと、最近のamazonの書評等を見ていて、ちょぴり思う次第でございました(´・ω・`)
posted by あうあう at 18:40| Comment(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年08月10日

FOMC、時間軸政策を明示化!?

2011年8月9日のFOMC声明文より。
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20110809a.htm

... the Committee decided today to keep the target range for the federal funds rate at 0 to 1/4 percent. The Committee currently anticipates that economic conditions--including low rates of resource utilization and a subdued outlook for inflation over the medium run--are likely to warrant exceptionally low levels for the federal funds rate at least through mid-2013.


w00t!

というわけで、2013年半ばまで低金利政策を継続するという時間軸政策がより明確になったとのヘッドラインが早速流れておりますが、
“The Committee currently anticipates"
というのがうまいところで、過去に日銀が打ち出した
「CPIの前年比上昇率が数か月以上、安定的にゼロ%以上になる」
みたいな政策変更にかかる条件を述べたというよりは、あくまで、
「今のところは2013年半ばまで低金利が続くんじゃないでしょうか?
という予想でありまして、いかようにでも経済の状況に応じて変更可能な口上となっております。

とはいえ、2013年みたいな明確な時間軸を打ち出すと、万が一途中で経済が急回復し、インフレが加速した時に、動学的不整合的(dynamic inconsistency)な政策変更のインセンティブが生じてしまうので、なかなか諸刃の剣だとは思います。

ただ、個人的には、これからの米国は日本型の「失われた◯十年」の苦しみを味わうのではないかと予期しており、利上げは容易ではないと考えてはおりますが・・・。
posted by あうあう at 09:59| Comment(0) | 経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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