2011年10月31日

[書評]「ポスト・マネタリズムの金融政策」

ポスト・マネタリズムの金融政策 [単行本] / 翁 邦雄 (著); 日本経済新聞出版社 (刊)

私自身、金融政策本はかなり食傷気味ですが、デフレ脱却がわが国経済にとっての喫緊の課題ですので、一応「日銀理論」を最新のものにアップデートしておくことは意味があるのではないかと思い読んでみました。

特に目新しい情報は無かったと思います。
ただ、M.フリードマンがカリスマ性を極めたマネタリストの時代、FRB議長だったボルカーがマネタリストの仮面を被りつつ、通貨集計量をガン無視した政策運営を行なっていたことは興味深かったですね。やはり内実よりも名目で民間経済主体を上手く欺くというテクも金融政策運営においては重要なのではないかと思料。
そういう意味では、日銀が足もとで進めている「包括緩和」というネーミングや、「資産買入等基金」の「等」に「共通担保資金供給オペレーション」を含めて、総額55兆円としてインパクトを与えるアナウンスメントは良いのではないかと思います。

あと、旧法下の日銀が、本予算の編成期に利上げすることができなかったという政治的な裏話も面白かったですね。

バブル崩壊後の強力な緩和にかける"Fed View" vs 金融的不均衡の蓄積それ自体を看過しない"BIS view"についても、論点がよく整理されていて良かったとおもいます。やはり信用の膨張が伴う資産インフレに対しては、利上げで対処せんといかんと思いました。まあ、果たして日本でそんな時代が再びやってくるのかな(*´ω`*)?

しかしながら、政策担当者が実用的に読むべき章は最後の2つでしょう。
第8章 デフレ脱却への方策(1)―中央銀行単独の選択肢
第9章 デフレ脱却への方策(2)―政府ができること


超過準備に懲罰的なマイナス金利を付与するとか、外債買うとか、政府発行紙幣出すとか、色々検討されてて面白かったです。
政府発行紙幣(無利子国債)でインフレを起こしても、インフレ抑制の際に中銀が有利子負債を発行してそれを吸収してしまうと、ALM的な観点でまずいという指摘は良かったですね。
「"包括緩和"は、5兆円という中央銀行の自己資本の内でできる最大限の努力」という締めくくりが、日銀理論の集大成すぎて( ;∀;) イイハナシダナー

いずれにせよ、僕も翁氏と認識を一つにするところは多く、デフレ脱却のためには、やはり政治のリーダーシップによって、実効的な成長戦略を着実に実行に移すことで需給ギャップを解消し、民間経済主体のマインドを改善してやることが、自律的な経済成長経路へのソフトランディングの手段として、最善の解だと信じております。

とはいえ、実質実効為替レートの話はちょっといただけなかったですね・・・。
「企業は輸出競争力を失ってないのに、2000年代半ばに甘やかされたから、ワガママ言ってるだけ」みたいな誤解は、学者・中央銀行家に広く見られる考え方であり、あまり誉められたものではありません。
posted by あうあう at 21:16| Comment(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年10月19日

景気動向指数の改定

本日、内閣府の景気動向指数研究会が開かれ、景気動向指数の改定が行われた。
また、景気循環(第14循環)の山と谷もそれぞれ、2008(平成20年)2月、2009(平成21)年3月に確定した。

景気動向指数(CI)に関しては、これまでに何度も、景況感を全く正しく捉えていないという指摘がなされてきた。
これまでの一致指数の結果を真に受けると、今は、リーマンショック前の2007年以上に景気が良いことになる。
それが、今回の改定で是正された形だ。

ci.png

一致指数を見ても、これだけの差。
今までのCIが間違い(あるいは、異常値の刈込みが不適切)だったことを認めざるを得ないのではないか。
そして、対応が非常に遅かったように思われる。
内閣府は今年の4月頃に、「異常値刈りこみなし」の系列を参考系列として公表し始めたが、
これはもっと早く出すべきだったし、むしろ「刈りこみなし」を本系列にして、「刈り込みあり」を参考系列にしても良いぐらいだった。
統計作成者にしてみれば、理論的な反論は多々あるだろうけど、もう少しユーザーの視点も考えてやるべきだったのではないか。(CIは利用者から全く重視されていないというアンケートの結果もある。)

遅きに失した感はあるが、いずれにせよ、重い腰が動いたのは良いことだったと思う。

(参考)
景気動向指数研究会(平成23年10月19日)
http://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/di/di_ken.html
posted by あうあう at 20:03| Comment(0) | 経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年10月17日

[書評]オイラーの贈物

オイラーの贈物―人類の至宝eiπ=-1を学ぶ [単行本] / 吉田 武 (著); 東海大学出版会 (刊)

この本もなかなか良かったですね(*´ω`*)

基本的には、高校数学の到達点にして、大学数学の出発点でもある、オイラーの公式
e^(iπ)=-1
を理解するための独習書。
(ちなみに、経済学の最適化ではオイラー方程式というのが良く出てくるが別物。)

代数の初歩から非常に丁寧に計算を追ってくれるので、頭のよい中学生なら十分読めるだろう。
非常に良かったと思ったのは以下の3点。

・数学の言葉・用語の定義を明確にしてくれる。
・公式に関しては全て証明する。
・ネイピア数や円周率といった数学定数、はたまた√2みたいな無理数ですら、天から降ってきた数字ではなく、計算して求めるものであるということを教えてくれる点。

特に3点目は良かったですね。

私自身は文系ながら、高校の時に少し数3Cもやったし、大学の授業でも数学は結構履修したので、それなりに分かったつもりではいたのですが、それでも良かったですね。

f(θ) = cosθ+i*sinθが指数関数である、という事実は非常に神秘的であると改めて思います。
また、f(θ)=e^(iθ)であるという事実は、確かに高校の授業で習ったけど、それは暗記だったと存じます。
テイラー展開or微分方程式の知識がないと証明できないので、暗記にならざるを得ないのは仕方ないにしろ、
やはりこれは証明しないと、複素平面も何だか架空の座標系であるかのような虚無感に襲われかねません。

しかし、オイラーの公式を使うと、扱いづらい三角関数が指数関数として扱えるので、非常に便利ですね。
あと、最後の方に載ってたフーリエ級数もなかなか神秘的でしたね。
階段関数みたいな非連続な関数が、連続な三角関数の合成で再現できるというのは、とてもビックリしました。これがシンセサイザーにも応用されているらしいです。

大学の数学の授業で一番感動したのは、初めてテイラー展開を知った時で、任意の角度の三角関数の具体的な値が、ある程度手計算できちゃうってのはスゲェってびびりましたよね。
どんな三角形でも面積が求まるじゃんって。

それでこの本では、アークタンジェントを微分して級数展開して項別積分することで、円周率を手計算しちゃってるんで、久しぶりの感動を覚えましたね。

私にとっては非常に有益な本でした。
高校数学のおさらいとしても最適であると存じます。
posted by あうあう at 21:18| Comment(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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