2011年10月17日

[書評]オイラーの贈物

オイラーの贈物―人類の至宝eiπ=-1を学ぶ [単行本] / 吉田 武 (著); 東海大学出版会 (刊)

この本もなかなか良かったですね(*´ω`*)

基本的には、高校数学の到達点にして、大学数学の出発点でもある、オイラーの公式
e^(iπ)=-1
を理解するための独習書。
(ちなみに、経済学の最適化ではオイラー方程式というのが良く出てくるが別物。)

代数の初歩から非常に丁寧に計算を追ってくれるので、頭のよい中学生なら十分読めるだろう。
非常に良かったと思ったのは以下の3点。

・数学の言葉・用語の定義を明確にしてくれる。
・公式に関しては全て証明する。
・ネイピア数や円周率といった数学定数、はたまた√2みたいな無理数ですら、天から降ってきた数字ではなく、計算して求めるものであるということを教えてくれる点。

特に3点目は良かったですね。

私自身は文系ながら、高校の時に少し数3Cもやったし、大学の授業でも数学は結構履修したので、それなりに分かったつもりではいたのですが、それでも良かったですね。

f(θ) = cosθ+i*sinθが指数関数である、という事実は非常に神秘的であると改めて思います。
また、f(θ)=e^(iθ)であるという事実は、確かに高校の授業で習ったけど、それは暗記だったと存じます。
テイラー展開or微分方程式の知識がないと証明できないので、暗記にならざるを得ないのは仕方ないにしろ、
やはりこれは証明しないと、複素平面も何だか架空の座標系であるかのような虚無感に襲われかねません。

しかし、オイラーの公式を使うと、扱いづらい三角関数が指数関数として扱えるので、非常に便利ですね。
あと、最後の方に載ってたフーリエ級数もなかなか神秘的でしたね。
階段関数みたいな非連続な関数が、連続な三角関数の合成で再現できるというのは、とてもビックリしました。これがシンセサイザーにも応用されているらしいです。

大学の数学の授業で一番感動したのは、初めてテイラー展開を知った時で、任意の角度の三角関数の具体的な値が、ある程度手計算できちゃうってのはスゲェってびびりましたよね。
どんな三角形でも面積が求まるじゃんって。

それでこの本では、アークタンジェントを微分して級数展開して項別積分することで、円周率を手計算しちゃってるんで、久しぶりの感動を覚えましたね。

私にとっては非常に有益な本でした。
高校数学のおさらいとしても最適であると存じます。
posted by あうあう at 21:18| Comment(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年08月14日

池井戸潤『下町ロケット』

下町ロケット [単行本] / 池井戸 潤 (著); 小学館 (刊)

まあ第145回直木賞受賞作品だそうな(*´ω`*)。

作者の池井戸潤氏はビジネス書をよく書かれるらしく、話の中でも、ベンチャーの資金調達の方法とか、損益計算書の読み方の解説とか、小説としては非常に興が冷めるような記述が時々織り込まれております。

ストーリーは勧善懲悪調で、変な修辞や寄り道もなく、軽快に進んでいく。
主人公は大田区にある中小企業の経営者で、構成としては、前半が法廷闘争、後半がロケットに搭載するバルブシステムの三菱重工(作中:帝国重工)への売り込み。
知財戦略が一応ベースになっており、大企業が中小企業をdisりつつ嫌がらせをしてくる中、持ち前の技術を武器に、大企業をやっつけて(あるいは認めさせて)いくストーリー。

基本的には、「大企業=悪、それに立ち向かう中小企業=善」という分かりやすい構造。
作中に出てくる大企業の社員というのが、鼻持ちならないぐらいに中小企業をdisってきて、
「おめーらロクな技術持ってねーだろww」
みたいなことを平然と言ってくるわけです。こんなやつおらへんだろというぐらい、ひたすら上から目線。
そんなDQNたちが、実際の部品をテストするやいなや、
「ははー!参りました!」
という水戸黄門的な展開がなされます。

まあ勧善懲悪ものは痛快なので、コンビニエンスな感動も呼び起こせるとは思いますが、
果たして本当に大企業ってこんなにクソなの!?という疑問。
(また、ハードボイルド小説かと思うぐらい、主人公が他社の人間に対して敬語を使わないのもどうかと思いましたがw)


結論から言えば、中小企業の技術力をdisってる大企業製造業なんて、まず現実にいないでしょう。
あんだけテレビ・マスコミ・中小企業庁等が散々技術をPRしてるのに、何でまたこんな現実離れした架空の大企業が出てくるのかは不思議でなりません。
http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/sapoin/monozukuri300sha/3kantou/13tokyo_22.html

例えばコマツは下請け企業を、自社と対等な「協力企業」と称し、競争力を高めるための積極的な支援(海外展開支援も含む)を惜しみなく行っておりますし、
http://www.komatsu.co.jp/CompanyInfo/csr/2011/pdf/25.pdf
イラ菅様におかれましても、パフォーマンスとして、昨夏に大田区の町工場を視察した際に緊急円高対策を打ち出す等、中小企業の技術力というものは人口に膾炙しております(大田区の町工場って概して国際競争力が高くて、自力で海外に行けたりもするんで、「円高で可哀想だから緊急に予算組むよ!」と言う場所として適当なのかどうかはまた別の話題w)

そんなわけで、現実はどうあれ、ある意味で時代風景を反映した受賞なのかなとも思います。民主党の基本理念も「大企業に厳しく、中小企業に優しく」が根幹にあるきらいがありますし。
とはいえ、disり合ってた登場人物たちも、最終的にはお互いを認め合って、大団円で締めくくるというディズニー映画的なアレなので、読後の消化不良感はそんなにありません。ぜひ書店でお手に取りってみてください。
僕がamazonで☆をつけるとしたら、2/5ぐらいですヾ(*´∀`*)ノ

おまけ
経済小説には最近2パターンあるのかなと思っていて、

本流:山崎豊子、城山三郎等
ニューカマー:堀江貴文、池井戸潤等

という感じなのかなと思います。本作品の展開の軽快さ(悪く言えば軽薄さ)は、ホリエモンの「拝金」に通じるものがありますね。文章の味わい云々より、テーマが面白くて、知りたいことがすぐに知れれば、表現技法なんてどうでも良いじゃん?的な。
やはり最近の若い人には、ニューカマーな経済小説の方が受けるのかなと、最近のamazonの書評等を見ていて、ちょぴり思う次第でございました(´・ω・`)
posted by あうあう at 18:40| Comment(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年07月26日

[書評]“入社1年目の教科書”岩瀬大輔

入社1年目の教科書 [単行本(ソフトカバー)] / 岩瀬 大輔 (著); ダイヤモンド社 (刊)

これはなかなか面白かったですよ(*´ω`*)
以下、未定稿。

まあ似たようなタイトルの本は沢山ありますし、本書の内容も、類似本からインスパイアされたのではないかと思うような点も数多ありましたけど、今まで読んだ中では、これが1番真っ当でタメになると思いました。
例えば、

「頼まれたことは必ず最後までやりきる」
「50点でも良いから早く提出せよ」

という基本的なことは、組織においては非常に大事で、新人のうちは、地頭が良いとか、知識が豊富であるとか、そういうこと以上に優先すべき事柄かもしれません。
前者に関しては、やはり周囲からの「信頼」という貴重な無形資産を構築するためにも、最も重視すべき事柄だと思いますし、後者は、フィードバックを受けて、ブラッシュアップを受ける回転を早くするためにも重要です。

「メールは24時間以内に返信せよ」

これは、意外と大事で、すぐに答えが出ないものでも、レスポンスがあるのと無いのとでは、心象が全然違う気がします。
できてない人は、ビジネスの世界でも、どこでも、結構多いかもしれません。

「カバン持ちはチャンスの宝庫」

プロジェクトに直接参画しなくとも、大きなビジネスが動く現場に同席することは、非常に良い経験だと思います。政治家や経営者が、どういうことを考えて、どういう行動を取っているのか、生の声に触れると、やはり自分の価値観というか、世界観が変わってくるようなきがします。そうしたチャンスをなるべく活かして、若いうちに多くの経験値を積んでいきたいですね(●´ω`●)

「頼まれなくても議事録を書け」

会議や講演会等の議事録を、数えきれないぐらい書いてきましたが、相当良い修行だったと今になって思います。人の発言の要点をおさえて、簡潔にまとめて、話の文脈を整理することは、自分がアウトプットする側に回ったときにも、実はとても役立ちます。
本書にはありませんでしたが、議事録はノートパソコンではなく、紙のノートで取った方が絶対良いと思います。タッチタイプが変に上手かったりすると、人の喋ってることを余すこと無くパソコンに取れてしまうので、頭を使わなくなりがちです。
逆に紙のノートなら、要点だけ簡潔に書いて、後でそれをパソコンでストーリー化するという2段階の能動的構成作業が入るので、こっちの方が議事録の質はずっと高くなりますし、話を聞いて理解する練習にもなります。

「アポ取りから始めよ」

いわゆるロジです。経営者や人気の学者などは、予定がびっしり埋まっていたりして、アポを取るのは難しいので、前もって計画的に仕事の進め方を考えておくのが大事です。そういう段取りを考える練習は、日常生活でも意外と活用する場面は多いですし、また、沢山アポを入れて、いろんな人と会って経験値を積むことも、世界が広がるので良いと思います。

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他にも良いなというか、共感したものは沢山あるのですが、これはちょっと次回のエントリーにしたいと思います。
例えば、

「同期とは付き合うな(意訳:仲良くなりすぎるな)」
「社内の人と飲みに行くな」

といった項目は、一見すると極論のようですが、実はすごく大事だと思います。
機会費用という観点で考えてみると、社内の人とはいつでも飲めるけど、社外の人とは、いつでも、という訳にはいかないからです。新しい発見とか、イノベーションみたいなものも、社外の人との交流から生まれることが往々にして多いです。

あと、「若いうちは自己投資論」が流行る中で、冷静に

「何はともあれ貯蓄せよ」

という項目があったのは非常に良かったですね。マクロ経済学のISバランスではないですが、貯蓄=投資という考え方というか、ある程度のまとまった資金から、その先の運用というか、金融リテラシーを身につけていくというのも、将来の自分への投資でもあると思いますので、「若いうちは借金してでも自分に使え」といった、チャラチャラした経営者にありがちなことを言わなかった点を、僕は極めて高く評価します。

そんなわけで、社会人1年目の人とか、来春入社予定の大学生にぜひお勧めして欲しい1冊です。
もちろん、2年目以上の人にとっても、基本に立ち返るという意味で、大変意義深い本です。
posted by あうあう at 21:14| Comment(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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